前回、2種類の図形を使って描く幾何学模様の描き方をご紹介しました。
その中で少しだけ、曼荼羅模様の描き方についても触れました。
今回はその点をもう少し掘り下げたく、曼荼羅模様の描き方の入門編として記事を書きました。
今回ご紹介する描き方は人によっては「これも曼荼羅模様?」という印象を感じるかもしれませんが、これまで当ブログで紹介してきた模様よりかは断然近いモノとなります。
というのも、今までご紹介した模様の描き方は全て縦横に図形を平行に並べて作る模様でした。
ズラズラっと図形を並べて敷き詰める感じ。いわゆる総柄(画面全体を埋め尽くす柄)ですね。
曼荼羅模様と比べると、完成後のシルエットが全く違うのは一目瞭然です。
今回はそのひたすら並べる総柄からは少し離れ、最終的な完成図(シルエット)をイメージしてから描くという方法を、曼荼羅模様をモデルにご紹介します。
「こういう模様を描きたい」という自分のイメージを形にするスキルを身に付けるため、一歩進んだ描き方を試してみましょう!
曼荼羅模様とは?
まずは曼荼羅模様について簡単にご説明します。
ものすごく簡単に説明すると、元々の発祥は密教という宗教からであり、曼荼羅と呼ばれる仏の世界を描く図像のことを指しています。
宗教における曼荼羅についてはこちらの書籍で色々学びました。ご興味ある方はぜひ。
書籍紹介▶︎ 世界で一番美しいマンダラ図鑑 正木 晃 (まさき・あきら)
昨今、世間で出回っている曼荼羅模様・曼荼羅アートは、特に密教や宗教とは関わりのないモノで見た目重視の装飾デザインです。
丸く円を描くように繰り返された模様が全て曼荼羅模様・曼荼羅アートと総称されていて、一つの模様のジャンルとなっています。
曼荼羅模様は宗教画でもあり模様のジャンルでもありますが、世間では後者として広く認知されていますね。
今回は後者の、模様デザインとしての曼荼羅模様の描き方をご説明します。
構造と描き方のポイント!
描く上でまず理解していただきたいのが、曼荼羅模様の構造についてと完成イメージを始めに決めておく必要性です。
これが今後「こういうイメージの模様を描きたい」というイメージありきで制作する場合には一番重要な部分となります。
というのも、基本的に模様は全て同じ形の繰り返しで出来上がります。
最終的な完成イメージを持たなくても、例えば簡単な図形一つをひたすら同じように繰り返しても模様は出来上がります。
それが、今まで当ブログで紹介してきた描き方です。
しかし、そのように闇雲に描くのではなく「曼荼羅模様を描きたい」といった完成イメージを持って描くとしたら、まず皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
おそらく真っ先に浮かぶのはその模様のシルエットで、曼荼羅模様で言えばそれは円・サークル状のシルエットになるかと思います。
その円・サークルが曼荼羅模様を描く上で必ず理解が必要な構造の基本となります。
曼荼羅模様は円・サークル状に描くということを念頭に置き、次の3つのポイントをご覧ください。
ポイント1:中心から描く
下の画像をご覧ください。線だけのとても単純な曼荼羅模様を描いてみました。
これをどこからどう描くか、想像してみてほしいと思います。
想像できましたでしょうか。では答え合わせです!
描き方は下記動画をご覧ください(音声なしです)。
いかがでしょうか。想像通りの描き方でしたでしょうか?(タイトルで既に答えを言ってしまいましたが!)
例外はありますが、一般的に曼荼羅模様は中心から描き始めます。
たまに私も、外・中・外など色んな場所からパーツを考え組み合わせることがありますが、基本的には中心から描き始め、外側へ広がっていくように繋げて描く人が多いと思います。
中心を決め、そこから花びらのように同じパーツをサークル状に繰り返し、大輪の花のように一つの模様が出来上がります。
ポイント2:円をきれいに等分する
そしてもう一つ注視していただきたい点があります。
同じパーツを円を描くように繰り返していますが、最後、変に重なることなくきっちりスタート位置に戻るという点です。
これはとても単純なことで、円をきれいに等分できる角度に繰り返しているのです。
手書きで描く人の中には感覚で描けるすごい人達もいますが、私の場合は”角度30度・45度”などと『円360度をキレイに等分できる角度』を計り、そこに繰り返し同じパーツを配置して描いています。
先ほどの曼荼羅模様で見てみましょう。
黄色い線をスタートとして反時計周りに繰り返すとします。
青い点線が30度・赤い点線が45度の目盛りになります。
パーツで分けて見てみると、30度の位置にあるパーツが濃いグレー、45度の位置にあるパーツが薄いグレーとなります。
このようにサークル状にパーツが繰り返されることで、円を描く曼荼羅文様が出来上がるのです。
ポイント3:隙間を埋める
最後のポイントは、隙間を埋めるようにパーツを配置することです。
先ほど、円を等分できる角度にパーツを置いていくと説明した時に、なぜ2つの角度(30度と45度)を用意したのか引っかかった人もいるかもしれません。
角度30度なら30度だけで模様は作れないのか?という具合にです。
では例の曼荼羅模様、角度30度だけのパーツだとどうなるかをご覧ください。
どうでしょうか…。かろうじて曼荼羅模様の感じはありますが、元々がかなり簡易的だったのでより隙間が目立ち、寂しい印象ではないかと思います。
色をつけたところで、やはり大きく開いた隙間が物足りなさを醸し出しております。
では角度45度だけのパターンも一応みてみましょう。
もはや曼荼羅模様ではなくなりました!色をつけたところで、あまりに寂しすぎます!
ということで、曼荼羅模様らしさを演出する上で非常に重要なポイントは「隙間を埋めるようにパーツを配置する」ということです。
曼荼羅模様・曼荼羅アートなどと検索して色んなデザインを見ていただけるとわかると思いますが、どれもビッシリ模様が詰まったデザインがほとんどです。
フリー素材などをダウンロードしてみて、試しに角度をつけて確認してみるとわかりやすいです。
必ずと言っていいほど、隙間を埋めるようにパーツが敷き詰められているのがわかると思います。
以上の3つが、曼荼羅模様を描く上でポイントとなる事柄です。
パーツの描き方・作り方にもまた別のコツがありますが、それは実践ワークをするときに改めてお伝えします。
自作の曼荼羅模様、色々!
構造と描き方がわかったところで、今までの私の作例の中から曼荼羅模様(的な模様)をご紹介します。
一見すると曼荼羅模様らしさが足りないデザインもあるかもしれませんが、全てサークル状に繰り返して制作しました。
それぞれの構造をじっくりご覧いただければと思います。
曼荼羅模様を描くとき役に立つ道具
最後に、曼荼羅模様を描くとき役に立つ道具(ツール)をご紹介します。
今回は実践は行いませんが、次回以降の準備としてご覧ください。
最低限必要なツール
・方眼紙(グリッドノート)※なければ白い紙でもOK
・シャーペン(鉛筆でも可)
・定規
・分度器
紙や筆記具は何でも大丈夫ですが、今まで同様おすすめは紙なら方眼紙 (グリッドノート)、筆記具は鉛筆より芯の細いシャーペンです。
またそれとプラス、定規と分度器が必須となります。
先ほど説明したように円を等分できる角度にパーツを置いていくので、分度器でその目盛りを放射状につける必要があります。
実際このような感じで目盛りをつけます(これは角度30度で等間隔に直線を引いています)。
転写(複写)で使えるツール
そしてさらにあると便利なのが、転写 (複写) をするためのツールです。
今回は実践を行いませんが、実際描いてみるとそっくり同じパーツをサークル状にひたすら描く作業、フリーハンドだと結構難しいことが分かります。
そこであると便利なのが「転写 (複写)」ができるツールです!
一つのパーツを何度もトレースしていくわけですが、一番手軽で入手しやすいのはトレーシングペーパーです。
昔は画材屋さんなどで割といい値段する物ばかりでしたが、最近は100円ショップでもよく見かけるので入手しやすくなっています。
私もAdobe Illustratorに出会うまでの手描き時代では、トレーシングペーパーを使って転写しまくっていました。
またその他にもトレース台というLEDライトが付く台でトレースしたり、お金をかけたくなければ光の入る窓でも出来たりと工夫次第でやり方は様々あります。
まとめると以下のようになります。
転写(複写)についてはまた詳しく記事にしてご紹介します!
まとめ
今回は曼荼羅模様の描き方を簡単にご紹介しました。
これらの事柄を踏まえて、今後さらに詳しく曼荼羅模様の描き方をご紹介していきます。
お楽しみに!
①曼荼羅模様の語源は密教の曼荼羅から。現在よく見るのは宗教とは無関係の装飾デザインとしての一つのジャンル
②曼荼羅模様の構造の基本は円・サークル
③曼荼羅模様の描き方には3つのポイントがある
④曼荼羅模様を描く時に必要なツールと転写(複写)で使えるツールの紹介