30歳で脱サラ。スロースタートでもメリットはある。回り道で逆に得られた事とは。

絵を描く生活を送りたい。自分の好きなことをしたい。

でももう遅いかも…。

社会人になってから、やっぱり好きなことが諦めきれないと思っても、現実的に考えるとスタートが遅いかも。

そういう悩みは大なり小なり、脱サラを考え始めたら誰でも出てくるかもしれません。

私は30歳で一般企業を退職して好きなことに本腰を入れてみた結果、その悩みに非常に振り回されました。

スタート遅すぎたかも、という焦りです。

でも作家活動を続けるなか、絵描きには画力以外にも必要になるモノが様々あることがわかり、スタートが遅くてもそれなりに強みになっている部分があることに気づきました。

ここではそう言った悩みや迷いを持たれている人、特に絵描きや創作活動を考えている人向けに、少しでも励みになることができればということで、自分の体験をお話しします。

絵描きの道、なぜ30歳になってから?

絵を描く生活を送りたい。

そう考えていた自分がそもそもなぜ30歳という遅さで作家活動を始めたのか、変に思う方もいるかもしれません。

そういった夢は絵と出会い描き始めてから割と早い段階から持ってはいましたが、結局私は一度、一般企業で働く社会人としての生活を選びました。

なんでそうなってしまったのかというと、単純に、現実的にその実現方法を現実的に考えていなかったからです。

その夢を「職業」という現実的な目標で持つことをせず、自分が描きたい絵を描き続ける」という生活に、ただ憧れているだけでした

そうなった原因は、良くも悪くも“描きたい絵”というのがいつでも自分にあったことです。

自分の描きたい絵を描くには、とにかく毎日描き続けること。それをすれば自ずと続けられるだろう。

信じられないかもしれませんが、若い頃の自分は本気でそう考えていました。。

とはいえ、さすがにある程度の年齢になった時に絵を描き続けるには絵で収入を得ようと考え始めるようになります。

一般的に、描きたい絵だけで食っていくのは現実的に難しいということが早々にわかっている人なら同業界の仕事からまずは始めると思います。

でもそれだと、描きたい絵を描く時間は減る

私は単純にそう考えてしまいました。

それが原因で、描きたい絵を描く時間を削ってまで他の制作はしたくないな…という考え方が自分の中にこびりついてしまい、結局、関連する仕事に就くことを避けてしまったのです。

あえて避けてしまったという感じに。

理解し難いかもしれませんが、今思えば要らないプライドが邪魔をしたように思います。

会社勤めを甘く見ていた結果、絵から離れてしまった。

ですが当然、収入がないと絵はおろか、生活ができないです。

そこで私は、絵を描くのは仕事以外の時間でと決め、仕事は普通にしながら描きたい絵を収入にする道はゆっくり探して行こうと考え、一般企業に勤めはじめました。

しかし!

会社勤めを甘く見ていたため、毎日ものすごく忙しく、休みの日は溜まった家事と疲れを取るための休養で一日潰れ、片手間では全く絵を描くことはままなりませんでした。

そして一時期は実際に絵を描くこともなくなってしまい、完全に気持ちごとごっそり離れてしまったのです。

ここで初めて「社会人になると仕事が人生の大半を占めるという現実を体感的に理解し、絵やデザインに関連する仕事に就かなかった後悔が一気に押し寄せました。

これが正社員とアルバイトの違いですよね。。

正社員になる前は当然アルバイトしかしてこなかったので予測が甘かったのですが、時間も体力もこんなに取られるなら、ちょっとでも好きな絵に関係している仕事にすれば良かった。

この後悔はかなり自分を苦しめました。後悔先に立たずとは本当にその通りです。

本当に現実が見えていなかった、甘い考えの結果だと思います。

それから数年間は一企業の社会人として生活していましたが、やはり昔から思い続けていた絵の制作がずっと尾を引く毎日を過ごしました。

仕事の疲れと絵に対する心残りのダブルフラストレーション。

それらが溜まり続け、もうこのままではこれから先も後悔しか残らないと気持ちが爆発したとき、退職を決断。

その後、ようやく絵を描く生活をスタートさせました。

脱サラ後も厳しい現実。それでも続けるために必要なことは?

それから、アート業界にはなんのコネもツテもなく知識も経験もまったくのゼロ状態の、完全なド素人として作家活動を始めることとなりますが…

実際始めてみて思ったのは、何もしてこなかった人間がすぐ結果を出せる程甘い世界ではないということ。

これだという方法が例え見つかったとしても、すぐに結果に繋がることの方が稀です。

というか、ほぼ無いと思います。

すぐという感覚は人それぞれですが、『結果=収入』として考えるなら、例えば若いうちから作家活動を始めていても一年以内に安定して売れるようになる作家などごく稀にしか存在しません。

ネットやメディアでは売れてる作家をよく目にすることもありますが、展示会などで実際会って知り合った作家さんの中に、自分の作品だけで食っていけているという人には残念ながらまだ出会ったことがありません。

何年も活動をしている人達がです。

そんな業界で、30歳からのド素人の作家活動。うまくいくことの方が奇跡に近いです。

私は今、作家活動を始めて4年目。

予想通り、そういった下積み期真っ只中です。

ただ、そういった芽が出ない中でもどう作家活動を続けていくか、自分で自分のメンタルをコントロールする術が絶対に必要になります。

それは絵で売れる方法を探すことと同じくらい重要だと感じています。

そして何より絵を描き続ける上で一番重要になってくるのは、絵を描く動機や理由、そしてその必要性が何なのかをしっかり自覚できているかどうかだと感じます。

諦めの悪さで気づいた、一つのターニングポイント。

絵描きが制作を続ける中で一番の壁となるのはおそらく自分自身です。

今の日本で絵が安定して売れている作家はごくわずかです。

専門家である芸大美大やギャラリーですら、絵で食っていくのは難しいと言っている業界です。

こうすれば売れるという道がはっきりしていないのが現実ということです

その現実との折り合いも必要ですが、そういった厳しい中でもどうやって絵を描き続けるか、どう道を作っていくか、それは自分との戦いになっていきます。

特に私は、所属しているギャラリーも団体もなければ資金援助を誰かから受けているわけでもなくたった一人で活動しているので、途中で投げ出しても困る人は誰もいません。

これといった結果が出ない日々を送る中、もう別にやめてもいいや…という自分の甘い考えをどう乗り越えるか、かなり苦戦しました。

そもそもただ楽しくて描くだけなら趣味でいいし、仕事にする必要もプロ意識を持つ必要もありません。

しかし脱サラしてまで絵を描く道を選んだとなると、絵を描き続けるために絵で収入を得られるようになりたい…と自然と考えてしまうんですよね。

時間が欲しくて脱サラしたわけですから、またわざわざ他の仕事をしようとは考えないのです。

しかし実際は、コンテストでは結果が出せない、絵はおろか安価のグッズですら売れない日々が続くと、楽しくてやっているはずのことがつまらなく感じるようになり、誰にも相手にされないことを一人きりでやり続ける意味は何なのかとネガティブな気持ちも当然出てきます。

しかしここで、私は逆にその気持ちを利用してやろうと決めました。

ここまでくると、開き直りと言うモノがあります。笑

なんで誰からも相手にされていないのに、自分はこの道を諦められないのか。

ただ”好きだから”だけでは続けられていないはず。

その理由を初めて自分で考えてみたのです。

その時やっと、ただ趣味で描く絵ではなく作家として作品制作をするには、絵を描く動機・理由=コンセプトやアーティストステートメントが一番重要だということに気がつきました。

諦めの悪さが逆にここに気づくまで背中を押してくれて、作家として制作を続けるには「絵を描くことが好き」以上に、なぜ絵を描くのかという具体的な動機や理由が絶対的に必要だという当然のことをようやく理解できたのです。

サラリーマンとは違う…収入より優先したこと。

ただ絵で食べていければいいのであれば、売れる絵を描けばいいだけのこと。

アートマーケットにも”売れる絵、売れやすい絵”というモノがあります。

当然、画力も営業力も必要になるので簡単ではないですが、マーケットの需要に応えて”自分の描きたい絵”ではなく”求められている絵”を描く。

求められている絵を描いて売る方が、自分の描きたい絵よりかは何倍も売りやすくなります。

自分の描きたい絵がアートマーケットの需要を満たしていることが一番ラッキーなパターンなのですが、私の場合はそうもいきませんでした。

そして、”描きたい絵””収入”を天秤にかけ”収入”が勝った場合、お金のために絵を描くことになります。

それも生きていくための一つの選択です。

しかしそれでは私の場合、サラリーマン時代となんら変わりのないスタンスとなることに気づきました。

お金のために仕事をする=絵を描く、ということです。

これに気がついたのは、サラリーマン時代があったからだと断言できます。

収入を得ることが最重要事項なら、確実にお金になる道を選んでいたはず。

”売れやすい絵”然り、関連する企業への転職など。

でもそれでは、サラリーマン時代となんら変わりがなく退職した意味がないんじゃないかと思ったのです。

描きたい絵にこだわる理由は何か。

安定した職を手放してまで、描きたい絵を描く理由は何なのか。

それは自分の人生に必要なことなのか??

そうです、コレなんです。

その描きたい絵というモノは、本気で自分の人生になくてはならないモノなのか。

それを具体的に明確に答えられるかどうかが、制作を続ける上で一番重要な動機なのでは?と思いつきました。

回り道が教えてくれた、一番大事なこと。

なぜ自分は絵を描くのか、自分の描きたい絵を描くのか、

なぜ他のことではなく絵じゃないとダメなのか

それは自分の人生に絶対必要なモノなのか。

そういう問いに明確な答えを持っているかが、結果が出ない日々であっても制作活動を続けられるかどうかの一つのキーになります。

もしその答えが具体性を持っていない感覚的なモノだけだと、自分自身を納得させるのも難しいです。

そうなるとさらに絵を描く意味を感じにくくなり、趣味でやっていた方が楽しかったな…と本末転倒になってしまいます。

ではその答えとは具体的に何?ということですが、ここで書くと話がズレて長くなってしまうのでまた改めて記事にしたいと思います。

ここまで色々ごちゃごちゃと言ってますが、根本はやはり一度きりの人生で好きなこと・楽しいと思うことを続けたいという思いです。

自分が好きだと思うことを人生をかけてやるんだという気持ちが、辛い社会人経験をしたことで芽生え、自分の中で確固たる地位を占めたと感じています。

それプラス、なぜそれが絵なのかという問いに対しての答えが、今の自分自身を作家・クリエイターとして支えてくれている重要な要素です。

もしそう言ったことも明確にせずに、作家という肩書きに任せてただ絵を描き、ただ売ることだけに必死になっていたら、結果が出ないことに絶望して簡単に諦めていたかも知れません。

作品が売れないとき、芽が出ない時に自分で自分を支えられるモノがなく外部の評価に頼ることになると、非常に挫折しやすいのではと感じます。

私は絵描きの道を進む決意が遅かった分、絵と離れた生活をしていたことで改めて自分にとって絵を描くことの重要性や動機・理由に気がつくことができました。

離れてわかる大切さみたいなことでしょうか。切っても切れないモノだったという感じです。

絵とは全く関係のない仕事をしたという回り道のおかげで、なぜ絵じゃないとダメなのかという問いに

ちゃんと答えられるモノを手に入れました。

そんな大層な思想とかではないですが、今思えば社会経験もない20歳やそこらでパッと思いつくようなことではないなとは感じています。

いろんな面を見る。柔軟な考え方でやっていこう。

そのほかにも社会人として働くことで人付き合いを学び、コミュニケーション力は若い頃より断然まともなモノになっています。

そのおかげで、人との繋がりが絵の仕事に繋がることもありますし、何より与えられた仕事は何があってもやり遂げなければいけない、という環境下は投げ出し癖のある自分の成長の機会にもなりました。

現実的にもそういったスキルの方が後々役に立ちますし、スタートが遅いのは何も悪いことばかりではないです。

とはいえ! あとは個々の気の持ちようになるかと思います。

ここまで語っておいて無責任かもしれませんが、スタートが遅かった、と思い込めばその通りになりますしまだまだできると思える人は何歳からでも型にはまらない自分だけの道を見つけることができるモノだと感じます。

もがいている時に一歩前に踏み出すためには、何でも二面性のように別の見方があることを忘れないこと、それが大事かなと思います。

今回の内容で言えば、スタートの遅さは悪い面だけじゃなく良い面もあるということです。

一つの面ばかり見続けると、前に進めるモノも進めなくなり、極端な考え方で自分自身を苦しめることになります。

何かにぶち当たった時、それをどう捉えていくか・他の見方もできないか、柔軟に考えるのも自分自身のメンタルをコントロールする一つの術です。

私はこれまで色々としくじり挫折を味わったおかげで、前を向くために考え方も柔軟になれたように思います。

人の生き方というのは人の数だけあります。

全ての人に同じ生き方がピッタリはまる訳もないのです。

世間一般では30歳超えてからの夢追いは無謀だと言われがちですが、自分にそれが当てはまるかはやってみないとわかりません。

その好きなことが本気で諦めきれないなら、年齢を気にする前にまずはやってみてもいいと私は思います。

人生一回きりというのは、変えようのない事実ですしね。

ただあくまでも私の考え方ですので、ご自身の生活環境なども含めてじっくり検討してみることは絶対にオススメします。

一つ確実に言えることは、スタートが遅い人間にも何かしらの経験があることは事実ですので、それを強みに変えるチャンスが必ずある、と諦めないことが大事です。

脱サラしてすぐの頃は「遅かった」という焦りと不安で思うように活動が出来ませんでしたが、今までの人生で得たモノが何もない訳ではないことに気づき、ようやく今は自分らしい作家活動が出来始めています。

自分の経験をどう作家活動に繋げていくか、もしくは好きなこと・やりたいことにどう繋げていくのか。

無理矢理に繋げようとすると混乱するかもしれないので、その経験を得る前と後で自分がどう変わっているのか、まずはそこを客観的に見比べてみると何かが見つかるかもしれません。

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サイトウ ミキ
30歳で脱サラした模様クリエイター。 模様を描き模様のことばかり考えながら、絵や写真・造形物や雑貨など色々と派生しながら創作活動をしています。 ●20年以上独学で描き続けた模様について、基本の描き方から応用編・世界の民族文様や日常にある模様・模様から考える人生観等々、色々マニアックに発信していきます。 ●社会人になって絵や創作などの時間がなくなり ”たった一回の人生これでいいのか”と悩み続け、30歳でようやく脱サラ。当時は周りに相談できず一人で悩んだ経験から、同じような境遇の人に自分の実体験を少しでも伝えるべく脱サラ関連の記事も書いています。 ●現在、自分の人生の最優先事項は”楽しい”と思えること。創作はもちろん趣味のカプセルトイや雑貨屋巡りなど、大人になっても”楽しい”と思えることをご紹介していきます。
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