
私は30歳になった2018年に、一般企業を退職して「諦めきれない夢=絵を描く生活を送ること」に専念する道を選びました。
それだけ聞くと、わざわざ歳食ってから収入の安定しない危険な道を選ぶなんて変な人だな…と思われると思います。笑
でもその決断をするまで、やはり自分なりに色々考えて、結果として退職の道を選びました。
どんなことがありどんな考えのもとそう動いたのか、今回はそんな30代リスタート人生を切った経緯とそこから伝えられる私なりのアドバイスを記事に書かせていただきました。
荒んだ会社員が退職を考え始めたワケ。
自分自身、会社員時代は本当に荒んでいたのを自覚しています。
2013年から5年と数ヶ月、アパレル企業の倉庫担当の社員として働いていました。
在庫管理やお取引先であるオンラインショップ運営会社への入出荷業務や顧客対応、また実作業をするアルバイトや派遣スタッフの管理などなど、そこそこ仕事量の多い部署に所属していました。
好きな絵を書く時間が十分に取れなかったのもそうですが、普通に忙しい部署だったので普通に毎日疲れていました。

ネガティブになりがちな会社員時代
会社という組織の中にいるのだから、できる限り波風を立てずに淡々と、目の前の溢れんばかりの仕事をとにかく卒なくこなそうと必死な毎日。
しかし、疲れとストレスで精神面が安定していないと常に正常にフル稼働することが非常に難しく、なぜこんな仕事量なのか、とか、他人の悪い部分ばかりにも目がいってしまい、何をするにもネガティブ思考に取り憑かれていました。
疲れとストレスがピークに溜まって思ったことが、この仕事って自分じゃなくても誰でもできるよな?ということ。
確かに、与えられた仕事を期限を守ってコストを削減したりして、目標通りに仕事を達成することは一定の評価も得られるし充実感を感じます。
しかし、別に自分じゃなくてもできることだし、なんならもっと上手くできる人がいる気もする。
疲れとストレスで前向きになれず、ついそう考え始めてしまったとき頭によぎったのが「絵を描きたい」ということでした。
明らかな不調の原因は…?
専門学校を卒業してからその会社に就職し、そこから数年間は仕事の忙しさで絵を描くことを完全に忘れ、画材はおろか簡単にできるPCすら開くことがなくなりました。
会社員時代、全く自覚していなかったけれど絵を描かなくなってから精神的に不安定になることが多くなったのです。
絵と出会ってから入社するまでの人生、今振り返れば絵を描くことが生活の中心にあったので、当然といえば当然でした。

絵を描くことから離れて気付いた、自分に必要なもの
仕事をすれば毎日忙しくて疲れるのは当たり前です。でもその分休みは規定通り取れていました。
なんなら、入社して二年目からは会社全体がノー残業を掲げ始め、それからは無駄にダラダラと続ける残業はかなり減り、有給も使いながら十分な休みをとっていたはずなのです。
しかし気持ちのリセットができずに、ネガティブな感情にのまれて鬱々とする日々が続きました。
会社に行きたくない。ずっと家で寝ていたい。
そういう負の感情が日に日に重くのしかかり、どんなに休みを取っても一向に疲れが取れず、今思えばうつ病の一歩手前だったのかもしれません。
今までこういう経験をしたことがなかったので、入社前までの生活と何が違うのかを考えたとき、「絵を描いているか描いていないか」これが明らかに違ったのです。
どっちもどっちの二択。非常に悩んで出した答え。
それに気づいてからは、絵を描きたいという理由だけで退職を考え始め、上司に相談しました。
簡単には退職を決断できず…
しかし20代後半だったこともあり、絵で収入が得られる保証は全くないし、そんな理由で会社を辞めるというリスクある決断はなかなかできず、辞めたいと上司に相談してから実は2年間ほどウジウジ悩んでいました。
傍迷惑も良いところです。笑
その間、なんとか仕事を続けながら絵を描くことができないか日々模索しながら生活していた訳ですが、結局、社会人というのは仕事が中心の生活になるんですよね。
いくらテレワークやプライベート重視の世の中になってきていても、やはり生きていくためにはお金がないと始まらない。
それが安定してから趣味だのやりたいことだのをするというサイクル。
今の日本社会ではそれが当たり前なんだというのを体感的に理解してから、本当に夢や目標に集中したいならそれを仕事として稼げるレベルにする覚悟が必要だと気づきました。

そのことを自分に置き換えて考えた結果、確かにそれでの収入(絵での収入)は絶望的で不安しかなかった。
関連する業種の人付き合いも、仕事になりそうなコネやツテもないからです。
しかしそれを見つけながら今の仕事を続けるのも、精神的にきつい。
そして何より「まずは絵を描きたい」その一心だけでした。
どっちを取ってもデメリットはある、だったら…
「仕事をしながら空いた時間に絵を描く」では、そもそも忙しくて時間が取れず、物理的に難しい状況だったので尚更、絵を描きたいという気持ちだけ大きくなっていきました。
今の仕事を続けていれば、収入の心配はないけれど絵を描く時間は今後も十分に確保できない可能性が高く、体調の不調は続くかも。
しかし退職をすれば、絵を描く時間が取れて気持ち的に満足できても収入面での不安定さは否めない。
結局、その時持っていた2つの選択肢はどっちもどっちだったのです。

こうなってしまうと、30歳も目前に迫っているし決めるなら今だと考えました。
一度きりの人生だから、一回くらいは本気で夢や目標に挑戦してみてもいいんじゃないか?
一度は諦めた道(絵で食っていくこと)だけど、逆にこれはいい機会ではないのか。
そういった気持ちが日に日に強くなり、今のネガティブ思考をリセットするために現状打破をしたくなり、退職という大きく生活を変える道を選んだのです。
そしてようやく、30歳を迎える2018年で退職することを決断し、絵を書く時間を十分に取れる生活を選びました。
結果として、健康でいるための決断だった。
アート業界・デザイン業界などの関連する業界には何もコネもツテもないのに、絵を描きたい一心で会社を退職。
確かに、全く後悔がないと言えば嘘になります。
もっと上手に仕事と絵を両立させる道もあったんじゃないかと。
でも今は、あの時退職を決断して本当によかったと思っています。
なぜなら、精神的な疲れや辛さという苦痛がほぼなくなったからです。
イヤイヤ言いながら仕事を続けていても、多分いつかは体調を崩してなんらかの病気になっていたかもしれません。
それをする前に「自分の精神的苦痛の原因は何か」を見極められたのは、自分で言うのもなんですがグッジョブだったと思います。

自分の身は自分で管理できてこそ、一人前の大人
大人になったら社会に揉まれて働くのが当たり前。
自分の気持ちや体調は二の次で、馬車馬のように働いてこそ立派な大人。
そんな考え方が、会社員時代の自分には多少あったと思います。
ですので、休みを取りがちな他の社員にもわざわざ言わないけど、内心色々と思うことはありました。
休む理由はみんな絶対何かしらあるのに ”こっちは気持ち的に無理してでも出勤してるんだぞ” という自分勝手な不満が募り、本当に嫌な人間だったと思います。
休みを取ったり休憩したり、身体や心が壊れる前に自分の身は自分で管理するのも、今となっては立派な大人だと思うのです。
体調を崩してまで仕事をする必要はないです。
体調を崩したら仕事もやりたいこともできず、身体か心が本格的に壊れるだけなので本末転倒です。
余裕があるなら、収入口は突然断たないのが無難
なので逆に、夢ややりたい事はあるけれどそこまで時間に余裕がない訳でも、精神的・肉体的に追い込まれている訳でもないという人は、別の仕事をしながらその道で稼げる方法を作っていくのが一番良いです。
なぜなら、本当に夢や目標に集中したいなら、それで生活できるくらい稼げるようにならないと結局続けられないからです。

仕事をしながら隙間時間で、夢の実現に向けての活動もする。
それなら経済的な不安もなく、夢や目標に一歩ずつ前進することで前向きになれます。
本当にこれが一番無難で堅実な道だと今でも思います。
でも、当時の自分にはできなかっただろうなとも感じます。
結果として無計画さは否めなかったけど、自分の身体を壊す前にその原因から離れるという決断ができたことはよかったと感じています。
本気で向き合って分かった、絵を描く意義。
とりあえず現状打破したいなら、動いてから考えるのも一つの手
今の仕事をしながらでは時間的に到底無理だし、夢ややりたいことを二の次にして仕事ばかり優先していたら、本当に精神的に辛い。
そう感じる人は無理に両立を考えずに、一度割り切って退職またはアルバイトや派遣に切り替えるのも一つの手段です。
先のことを考えると怖いかもしれませんが、そうやって生活を大きく変えると見えてくることや学ぶことなど、必ず何かしらが出てきます。
例えば私の場合、一度は退職は失敗だったと感じました。
単純に絵の仕事がなく、稼ぎ口が全くなかったからです。笑
でもそれで人生が終わることは当然なく、今こうやってブログを立ち上げ記事を書いています。
退職前は想像すらしていなかったことをしています。

何か行動に出てそれが失敗だと感じてしまっても、またそこから次の道を考えれば良いのです。
今日が終われば必ず明日が来ますよね、嫌でもなんでも絶対に来ます。
時間は常に流れているので、「失敗=終わり」とは簡単にはなってくれません。
感情的にならず、何が失敗の原因だったのかを考えられればまた次に進めます。
崖っぷちで見つけたモノは、アーティストとしてのアイデンティティに
そうやって無理やりにでも毎日何かしら絵に関することを続けた結果、私は今のサイケな絵を描くことの意義を自分の生きてきた人生から見つけることができました。
これはおそらく、仕事をしながら趣味程度でやっていたら到底気付けなかったと感じます。
退職後一人の時間が圧倒的に増え、アートコンペなどに応募する際も自分のこれまでの人生を振り返りながら、作品コンセプトを考え続けた結果です。
これも今となっては退職して絵に集中してみて良かったことの一つです。
※もしご興味あればHPにコンセプトを記載していますのでご覧いただければと思います。

夢や目標、好きなこと・やりたいことに対する気持ちが本気であればあるほど、それ以外のことに時間を費やすのは非常に後ろ向きになります。
それが良いか悪いかは人ぞれぞれ違いますが、私はそうやって他のことに後ろ向きになり、やりたいことだけを突き詰める人というのは絶対にそこに意義やその人だけの何かを見つけ出すと思っています。
でも人によっては片手間でも十分な場合もあるし、それはどちらが良いというのではなく人それぞれ合う方法が違うのだと考えています。
私の場合は退職して絵と本気で向き合って、これでよかったと思える結果になっていますが、そう思えるまでも時間はかかりました。
ですのでもし今、夢や目標と全く関係のない仕事で満足していなくて退職や今後の進路に悩んでいる人がいたら、お金とその夢や目標に対する自分の気持ちの重さを天秤にかけてじっくり考えてみることをオススメします。
退職してみて思うこと。
こうやって、30歳で退職という社会的危険と言えることを実際にやってみたわけですが結果としてやはり、計画だけはあるに越したことはないと思いました。笑
退職して絵と向き合ってよかった!とは言いますが、それ以前に退職して絵で食ってくためのプランが明確に現実的にあれば絶対により良い結果にはなったと思います。
私の場合退職した一年後に結婚したこともあり、始めは考えの違いで衝突も多々ありましたが、今は夫の理解があって作家活動が成り立っています。
本当にラッキーな事でとても感謝していて、時間がかかっても絶対に結果は出そうという原動力にもなっています。

しかし実際に退職をする前に、なぜ退職したいのか・なぜその夢や目標が諦めきれないのか、そのあたりをその時々の体調や精神状態だけで考えるのではなく、長い目で見て人生設計をちゃんと立ててもよかったな…とは感じます。
もちろん、当時の自分に余裕があればの話ですが。
ただ30歳って一見、もう新しいことにチャレンジするのは遅いと思われがちですが、実際やってみると全然そんなことはないです。
それが絵だったからというのもありますが、夢や目標・好きなことが不完全燃焼のまま仕事をネガティブに続けるくらいなら、試行錯誤ばかりの日々でも今の作家活動を選んでよかったと思っています。
その方が、チャレンジしないで諦めるよりも圧倒的に様々な経験や失敗から多くのことを学べるからです。